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広島高等裁判所岡山支部 昭和34年(ラ)33号 決定 1960年3月28日

抗告人 天満コアイ

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は、本件不動産は金百十九万円で競落されその競落許可決定があつたが、その最初の最低競売価格は金百五十九万四千円であつてこの価額は不当に低額である。このように低額に決められたのは競売手続開始決定の物件目録記載のように二筆の土地の合計坪数が十五坪五合六勺として評価せられたによるものと思われる。併しこの二筆の土地の実測合計坪数は三十坪を超えるものである。さればこそその地上に建坪二十一坪五合六勺の広さの本件家屋が存在し得るのである。従つて実測坪数によつてその価格を計算すれば最初の鑑定の基準によつても六十万円は高く評価されるのみならず、更に時価により本件不動産を評価すれば最低金二百五十万円を下らないものである。しかるに前記のように不当な低額で競売を許した原決定は抗告人の財産権を侵害し憲法第二九条に違反するものである、というにある。

よつて記録を調査するに、本件競売申立は岡山市大供字中道二三番の二、宅地七坪九合三勺、同所二三番の三宅地七坪六合三勺と登記せられてある宅地に対してなされ、競売手続開始決定、鑑定命令、評価書、競売及び競落期日公告竝びに競落許可決定がいずれも右登記簿上の表示によつてなされていること、又本件のその余の競売申立物件である家屋は右二筆の宅地上にある建坪二十一坪五合六勺の建物と表示せられ登記せられてあることが認められ、右宅地の実測坪数が登記簿上の坪数よりも広いのではないかとの疑が生ずるのであるが、当裁判所が審尋した竹原強及び同人提出の岡山市長の証明書によれば、右二筆の宅地に対しては特別都市計画法に基く仮換地として二四坪三三の土地が指定せられた関係上前記二十一坪余の建物がその地上に建設せられているのであることが認められ、しかも未だ仮換地の指定があつたに過ぎず終局の換地処分がなされていない以上、従前の土地につき抵当権を有する者がその抵当権の実行のため競売申立をなすについては従前の土地につき競売を申立て、その競売手続も従前の土地を表示してこれを行う以外に方法はないから、原裁判所が総ての本件競売手続を従前の土地の坪数を表示してこれを行い、その評価も従前の土地の坪数に従つてこれをなさしめたのも当然(従前の土地と換地との価額の不均衡は換地処分において清算金を以て清算される)であつて、何ら違法な点はない。

而して鑑定人の本件宅地及び家屋に対する評価額は合計金百五十九万四千円で、最初の最低競売価額も同額と定められたが、三回に亘る各競売期日において何人からも競買の申出がなされないため順次低減せられて最後にその最低競売価額が金百五万五千円と定められた結果漸く金百十九万円の競買申出があり、その申出が許容せられたものであることが記録上明らかであつて、これらの点からしても右鑑定の評価が不当に低額であつたとすることは出来ず、抗告人の疎明によるも未だ右認定を左右することは出来ない。

よつて抗告人の本件抗告は理由がないものとしてこれを棄却すべきものとする。

(裁判官 高橋英明 浅野猛人 小川宜夫)

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